著者が独自に開発した「SRS速読法」という速読のトレーニング法を紹介した1冊。この訓練により、最終的に通常の10倍の速さでの読書が可能になるという。 訓練は、読むことに関する技術だけでなく、記憶法やイメージ訓練、身体を使った健康法など、能力開発の多彩な手法によって体系化されている。また、「視覚的知能」の開発、情報の「分散入力」「並列処理」「統合出力」の実現、「音の読書から光の読書への移行」、情報を「深い領域にひびかせる」ための4段階のステップなど、独特の視点から練り上げられた概念やステップが多数盛り込まれている。 具体的には、ランダムに並ぶ数字から奇数だけを素早く探し出すもの、風景写真を1分間で覚えてスケッチするもの、1分間で樹木が芽から大木に育つ様子を頭の中でイメージするもの、両手の指先を合わせて対になった指同士を触れ合わないように回すものなど、計73種類の訓練が紹介されている。数は多いが、1つやるのに数分しかかからず、パズル感覚で気軽にできるものもあり、負担は少ない。それぞれに「対象をきちんととらえる能力を高める」という形で、訓練の目的が明確にされているため、納得のうえで取り組むことができる。また、訓練に並行して論じられている能力開発のアドバイスや仕事術などは、能力の使い方に関するヒントにもなる。 著者は、この速読能力には仕事や学習面だけでなく、精神面のゆとりや人生の充実を生み出すメリットもあると強調している。1つの能力を究めることが、さまざまな自信につながる、ということなのだろう。(棚上 勉)
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